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イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】

第2章 焦燥


厩舎で馬に飛び乗り、
森を駆け抜ける。
森には午後の優しい木漏れ日が降り注いでいた。


本当なら、今頃、
自分が淹れたハーブティを飲みながら、
サラの屈託のない笑顔を眺めているはずなのに。


(まさか、攫われるなんて)


今回は、いつもサラについているはずの
騎士団長アランは遠征に出ていて、
同行していなかった。


(きっと、アラン様が居ない事を知っていたんだ。
野盗はかなりの数で、
太刀打ち出来なかったとジル様は言っていた。
そんな数の野盗が
このウィスタリアで徒党を組んでいるはずがない。
お金で雇われたに決まっている。
そして、プリンセス制度を快く思っていない侯爵…)


確証はないが、
長年のシュタイン国王ゼノの側近としてのカンが
そうだと言ってる。


ユーリは確信を持ち、
その場所に向かった。


辿り着く頃には日は傾き、
夕陽が辺りを赤く染め上げていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ユーリは勢いよく屋敷のドアを開いた。


「な、なんだ貴様は!?」


屋敷の執事らしき男が驚きユーリを見やる。


「今朝、帰ったはずのプリンセスが、
まだこちらにお世話になっていると伺ったので、
お迎えに上がりました。」


いつものように微笑みながら告げるユーリ。
だが、その眼は怒りをたたえている。


「な、なにを」

「始めからそのつもりだったんですよね?
もっと早く気付くべきだった。」


「なんのことだ!無礼な!
衛兵、衛兵はどうした!!」


ユーリは、くすっと息を漏らすと


「みんな疲れて眠っちゃったみたいですよ。」


「!!!」


「こんなに広いお屋敷なんだから、
もっと腕の立つ人を雇わなくちゃ。
プリンセスはどこに?」


「し、知らんっ、なにかの間違いではないのかね?」

「おかしいなぁ、
衛兵のおじさんが、ここにいるって教えてくれたんだけど。
もう一回だけ聞くよ。」


ユーリは男の喉元に短剣を突きつけると
笑顔を消し、
自分でも驚くほど
低い声で唸るように吐いた。


「…サラ様は何処だ?」


「……こっ、この廊下の1番南側、こ…侯爵様のお部屋に…」


その言葉を聞くと、ユーリは短剣を納め、
部屋を目指し駆け出した。


男はガクガク震えながらその場にへたり込んだ。

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