第12章 Autumn編 C
音に身を任せ、しっかりとステップを踏む。一瞬、壱原さんと目が合った気がした。それをまるで合図にするかのように、ポジション移動時に誰かの足が容赦なく私の足元を崩さんとする。
それをなんとか避けるが、身体ごと私にぶつかってくる一人の影が迫り、思わず唇を噛む。こんなことを平気でしてくるこの人たちが許せないのと同時に、そこまでして私を痛めつけたいのかこの人たちはと思うと、絶対に負けてはいけないと思った。
ぎりぎりのところで、体制を変えなんとか避けてポジション移動を終わらせる。こんなに神経を使うダンス練習もないだろう……。
メロディが静かに終盤に差し掛かり、終わりを告げる。同時に、無駄に入りすぎていた体の緊張を解く。
「はぁ……」
「凄いじゃないの天音ちゃんっ! 今までで一番よかったわよ!」
「先生……ありがとうございますっ」
呼吸を整え、なんとか笑顔を返すことが出来た。壱原さんに視線を向ければ、彼女はただ不敵に笑うだけで痛くも痒くもないという感じだった。彼女が真っ直ぐと私の元へと近づいてくる。
「星織さんって何にも出来ない人なのかと思ったけど、凄いのね! ねぇ、よかったら今から少しお洒落についてお話しない? 互いに切磋琢磨しましょう」
――さっき足払いをしてこけさせようとした人が、何を言うのか。