第9章 Summer編 C
「美風さん! 本当に来て下さったんですのね」
「君は……カミュのパートナーだっけ?」
「愛佳とお呼びくださいませ」
「で、これは……?」
「星織さんと、愛妻弁当対決をしていますの! 是非美風さんご本人にジャッジして頂きたくて」
「ふぅん……?」
ちらりと美風さんの視線がこちらに向く。隣の聖川さんにも視線を向けたのか、聖川さんは黙って会釈だけした。
「先に言っておくが、天音はまったく料理出来ないみたいだからそれじゃあフェアじゃねぇだろ? 聖川にサポートを俺が頼んだだけだからな」
「そういうこと。天音って料理出来ないんだ」
「……女の子らしいとこが全然なくて、すみません」
「別に。僕自身は気にしないけど」
机に並べられた豪華なお弁当と、私が作った卵サンド。誰がどれを作ったのかなど、一目瞭然。
「じゃあ、まずは愛佳のから食べていいのかな」
「はい! どうぞ召し上がってください」
美風さんの口に、黄色い綺麗な卵焼きが放り込まれる。
「ふん……うん。美味しい」
「本当ですか!? 嬉しいですわっ」
「程よく甘くて、ふんわりしている。甘い卵焼きか……」
「だし巻きもありますわよ!」
「じゃあ、それも。んっ……うん、これも美味しいね」
「ふふ、ありがとうございます。大好きな美風さんに褒めてもらえるなんて、とても嬉しいですわ」
「だし巻きも、だしが入っているわりには型崩れもなく、辛すぎるわけでもないし味付けもいいね。何かお弁当のテーマとか、ある?」
「ずばり、純和風ですわ! 和食を中心に作ってみたんですの。美風さんの好みはわからなかったのですが、男性ですしあっさりとしていながらもがっつり食べられるものを選んでみました」
「なるほどね。洋風だとこってりしやすいし、いいチョイスかもね」
「うふふ」
「じゃあ、次は天音だね」
私が作ったサンドイッチを手に取り、一口頬張り始める。