第9章 Summer編 C
「卵って先にいれておくんでしたっけ? お湯が沸いてからでしたっけ?」
「そ、そこからなのか!!?」
「……ご、ごめんなさい」
「いや、構わない。沸騰したお湯に入れるのがいい。卵が浮いて黄身が片寄ることが少なく茹でることが出来るからな」
「そうなんですか? 全然知りませんでした」
「基本は水から作るやり方を学ぶだろうが……お湯からの方が好みの堅さに出来ていいぞ」
「ゆで卵にも、色々あるんですね」
「塩を小さじ1くらい入れておくのもいい」
「あ、じゃあそうします!」
言われた通り、塩を小さじ1入れておく。ゆで卵って凄く簡単なイメージがあったけど、実はそうでもないのかも。
「ゆで卵が出来れば、殻をむいてボールに移して潰す。そして適量のマヨネーズをいれ、混ぜればあとはパンに挟むだけだ」
「なるほど! ありがとうございます。聖川さんは料理得意なんですか?」
「そうだな……教養程度に身に着けているに過ぎない」
「それでも凄いです」
愛佳さんの方へ視線を向けると、凄い豪華なお弁当が出来ていた。やっぱり凄いなぁ……。
「そろそろ卵を上げた方がいいかもしれないな」
「了解です!」
卵を上げ、水で冷やしながら殻をむく。聖川さんの指導の甲斐もあって、なんとか無事にゆで卵を完成させることが出来たらしい。
「あとは先程教えた通りだ」
「わかりました!」
ボールの中でゆで卵をフォークで潰し、気持ち少な目でマヨネーズをいれる。なんか美風さんってヘルシー嗜好っぽいじゃん?
「で、できた!!」
「うん、見た目も申し分ない。これなら美風先輩も食べてくださるだろう」
「藍連れてきたぞ!!」
「……一体何事?」
翔くんに連れられ、美風さんが家庭科室に入ってくる。すかさず愛佳さんは、美風さんに駆け寄った。