第26章 夢の終わりはA
病室の窓辺、ふと口ずさんだ歌。これは確か、大好きな彼が歌っていた歌。
窓を開ければ、まだ冷たい風が吹き込む。空気の入れ替え、そのつもりだとしてもあまり開けすぎると、彼の身体を冷やしてしまうかもしれない。
本日は12月26日。夢のようなクリスマスは、あっさりと過ぎて行った。私は……結局あの舞台に上がることが出来なかった。きっとあの場に戻っても、彼の倒れた姿が瞼の裏に焼き付いて消えなくて、足が竦んだと思う。だからこれでよかったんだと……言い聞かせる。
彼はこれを知れば、怒るだろうか? うん、もしかしたら怒るかもしれない。
うたのプリンセス様、優勝者は嬉しいことに、あの愛佳さんだ。長年の夢が今、叶ったと嬉しそうに私に話してくれたのはつい今朝のこと。私は未だぎこちない表情で「おめでとう」と笑顔を作ることしか出来なかったけれど、本当に嬉しかった。
そして、藍くんのこと。
社長さんからは特に何かアクションはなく、ただ彼は長期活動停止になるだろうという話だけ聞かされた。それはつまり、藍くんが所属するグループも同じく活動が停止になるということ。元々彼らは、個人活動の方が盛んだったためかあまり残念そうではなかった。
扉をノックする音が聞こえる。