第21章 この恋心不良品につき 番外編
「おい、おい愚民」
「ん……?」
いつの間にか、練習室の床で、疲れて倒れるように眠っていたらしい。目が覚めると、カミュの姿が映る。
「いけない、わたくしこんなところで……っ!」
「この間抜けめ」
「あっ、ちょっと!!? 触らないでくださる!?」
「煩い愚民、落とすぞ」
ふわりとお姫様抱っこされ、練習室から連れ出される。陽は傾き、夜が訪れる。外が薄暗いせいか、人通りも少ないお陰でこの姿を誰かに目撃される心配がなくて、とてもほっとする。
「カミュのくせに、優しくするなんて気持ち悪いですわね」
「笑うな愚民。落とすぞ」
「きっと……星織さんのお陰なんでしょうね」
「何をくだらんことを……」
「星織さんと出会ってから、カミュはわたくしにも優しくなりましたわ。わたくしの嫌味のかわし方も、上手くなって」
「後者は慣れだろう。あんなもの、毎日やっていれば自ずと慣れる」
「……わたくしとカミュの間に、生易しい甘さは不要。そう以前仰られませんでした?」
「そうだったか……?」
「貴方って人は……」