第19章 終末の彼方で
「私の方こそ、ごめんなさいっ! えっと、まさか藍くんがそんなに困惑するとはその……思ってなくて」
「困惑? ああ……そっか、なんか変に言葉に詰まるような、思考が働かなくて無意識に焦る気持ちがこみ上げるのは、そのせいなのか」
藍くんは掌を見つめて、前触れなく私の手を掴んだ。思わずびくりと反応すると、少しだけ握った手の力を緩める。
「ああ、でも少しだけ……わかるような気がする」
伝わる手の感触は、相変わらずひんやり冷たくて、けれど男の人特有のしっかりとした手で。ああこの人はやっぱり男の人なんだと、実感して、どきどきする。
私はこの人が好きなんだと、思い知らされる。
「好き、だよ」
じんわりと胸の中に広がっていく。もう一度、もう一度とねだるように、手を握り返す。
「天音。好き」
微笑んだ彼が、眩しかった。瞳の奥が熱くなって、私の表情はすぐに崩れ去った。