第18章 Winter編 B
私たちは何を言うまでもなく、いつもの泉へと足を延ばす。もう通い慣れたこの場所は、お気に入りというよりかは、もっと特別な場所へと変わり始めていた。
彼と真正面から向き合えば、朧げだった現実がすぐ目の前に迫って見えて、息が苦しくなる。呼吸をするのが、大変なほどに。いつだって彼は真剣だった。真っ直ぐで、嘘偽りなく厳しさも優しさも、愛情でさえも……余すことなく私に与えてくれた。
私は本当に、誰にもきちんと返せていないことに気付き、罪悪感が滲む。
「カミュへの想いを……沢山、沢山自分の中で反芻させて、考えてみたんです。私はカミュをどう思っているのか、どう……感じているのか」
幼いという理由だけで、この想いの正体から目を背けてもいい理由にはならないだろう。私には知る必要があり、彼はそれを知る権利がある。
風が私たちの間をすり抜けて、言い表せない距離を一瞬感じた。それを合図に、私は唇を動かした。
「私は、カミュが好きです」
噛みしめるように、一字一句、大切にして。カミュは一瞬目を見開くが、私の言葉にはまだ続きがあることを察したのか、目を伏せた。
「でも、それは貴方のいう……恋とは違うんです。カミュと同じ、好きとは違うんです。私はカミュが好き、大切……です。だけどこれは、まったく違う……愛情なんです」
「……それが、お前の答えなのだな」
「はい」
背けないこと、向き合うこと、それは私の大切な義務だ。
彼の想いを大事に思うならこそ、私はどんなに心が痛くてもこの想いの正体を、彼に告げなければならない。異なる想いであること、彼を……愛せないこと。