第17章 Winter編 A
「わたくしからとやかく言うような、そういうものではないですけど……貴方も気付いていると思いますけど、わたくしたちはコンテストが終われば、また元の生活に戻ることになりますわ。彼らはまたわたくしたちの手の届かないアイドルへ、わたくしたちは彼らとは住む世界の違う一般女性へと瞬く間に戻っていく。彼らと一緒にいれる時間は最早残りわずか」
「……そうですね」
「元々、彼らはわたくしたちからすれば雲の上の存在。恋愛なんて、成立するはずがありませんのよ。わかっていますの?」
「はい、わかっているつもりです」
「クリスマスが終われば、結果がどうあれ離れ離れになるということを考えて、今後を考える必要がありますわ。お忘れなく」
「確かにその通りですね。ありがとうございます、なんだか本当に……もう少しで一緒にいれなくなるんだなぁって実感しました」
遅かれ早かれ、それはわかっていたはずのこと。それでも私には、目の前のことをこなすことのほうが大事で、正直忘れていた現実。でもそれは確かに訪れる、遠くない未来の運命。
「私……藍くんともっと一緒にいたくて、沢山欲張りになっていくんです。こんなに触れられる距離にいるのに、伝えられない気持ちが沢山あって……どうしたらいいかわからないんです」
好きだとか、愛してるとか、よくわからなくて。何をどう言葉にして、何をどう形にして彼に伝えればいいのかわからなくて。
これは本当に恋? ただの子供がおもちゃを取られまいとしているわがままと何が違う? そんなことを考えながら、彼の隣を歩く。時々見せる笑顔とか、私を思ってくれる思いとか。