第9章 一番
もうそろそろ期末テスト。
2学期って長いと思ってたけど、結構あっという間だなぁ。
勉強と部活の両立に慣れてきたとはいえ、勉強の方はどんどん難しくなっていく。
「はぁ…ダメかも…自信ない…」
家で山本くんと勉強しながら私は弱音を吐く。
「さやかちゃんが留年したら…俺の後輩か。それも楽しいかもね」
山本くんがニッコリ笑って言う。
「ええぇ…いやだぁ…」
「まあ、でも…難しくなってるからね。その分たくさん勉強しないといけないし…。さやかちゃんはバスケもやってるから大変だよね。
えらいね。よしよし」
彼がニコニコして私の頭をなでなでしてくれる。
「えへへ。うれしい…。ていうか、山本くんも勉強難しくなったとか思うの?」
「思うよ。だからこうして真面目に勉強してる」
「うわぁ…山本くんでも難しいと思うんなら、わたしなんかやっぱりもう無理だよ〜」
私はうわーんって机に突っ伏す。
彼も机に突っ伏して、私の顔を見る。
そして私の頭を手でぽんぽんってする。
「大丈夫。俺も頑張るから…がんばろ」
私を励ましてくれる彼の優しい声に私は笑顔になる。
「うん…期末終わったら冬休みだもんね。どこか行こっか」
「ふふ…俺はどこか行くより楽しみなことがあるから」
彼が嬉しそうににやける。
私は起き上がって首を傾げる。
「え? なんかあったっけ?」
彼もガバッと起き上がる。
「えっ? 忘れたの? …俺がまた一番取ったら…」
「あぁ、それね」
「忘れてたの!?」
「忘れてないよぉ」
「ホントにぃ?」
彼が疑いの目で私を見る。
私は笑ってごまかす。
忘れてないよ。ぶりっこしただけ。
だって私も楽しみなんだもん。