第15章 -試食会-
週が明けて、火曜日の朝練の後、
オレは桃井に呼び止められた。
「虹村さん!今日のお昼休み、
家庭科室で試食会するんで、
虹村さんも来てくださいっ♪」
試食会…?
「いや、桃井…オレは学食で…」
桃井と家庭科室…イヤな予感しかしねぇ。
「デザートみたいなもんですよー♪
こないだひかりさんと作った
レモンのはちみつ漬け、
そろそろ食べごろだって、
朝、ひかりさんからメールきたんです。
青峰くんたちにそのこと話したら、
試食会したほうがいいって。」
あぁ…あれか。
そういえば、昨日ひかりも言ってたな。
ひかりとは、付き合うようになって
電話かメールは毎日している。
『彼女なのに、さん付けヤダなぁ。
敬語もヤダなぁ。』
って電話で言われて、
”ひかり”って呼ぶようになった。
元々敬語は抜け掛けてたし、
敬語無しはありがたい。
つか、それならオレも
”虹村くん”は無しつったのに、
まだ名前を呼ばれていない。
平澤さんと会ったことも電話で聞いて、
オレはただただ、
ひかりの行動の速さに驚いていた。
「つか、なんでオレもなんだよ?」
オレは思考回路を現実に戻し、
なんとか試食会からは逃れたくて、
桃井に聞き返す。
「2年生代表ですよー♪
主将としてちゃんと確認してください♪
(イロイロ聞きたいし♪)」
桃井の言い方が気になるが、
ひかりも一緒に作ったんだし、
まぁ、大丈夫だろ…。
そう思って、結局オレは、
その試食会に参加することを承諾した。