第11章 -”蜂”合わせ-
「はい。お疲れさま。」
ひかりさんがオレに差し出したのは、
昼間食いそこねた
レモンのはちみつ漬けだった。
「これ…」
「あんまり作れなかったから、
虹村くんのだけ別にしておいたの。
さすがに部活中に特別に…って渡せないし、
着替え見られたし、
あげるのやめようかなーとも
思ったんだけどね。」
だから、見たのは不可抗力…
と、言いたかったが、
やっと笑顔が戻り、
明るくなったひかりさんを見ていたら、
何も言えなかった。
オレの…だけ?やべぇ…照れる…
「ありがとうございます。
今食っていいですか?」
「もちろん。」
ひかりさんと並んで椅子に座り、
オレはレモンのはちみつ漬けを
口に入れた。
「うま…っ。」
「ほんとに?よかったー♪
いっぱい食べてね。」
ひかりさんが卒業してからも、
マネージャー(桃井以外)達が
レモンのはちみつ漬けを作ることもある。
別にまずいわけではないが、
ひかりさんのとは少し違った。
ひかりさんの
レモンのはちみつ漬けは、
渋みがなくてほのかに甘い。
それに、オレの分だけ
別に用意していてくれたことが、
すげぇ嬉しい。
「そんなに美味しくできてるなら、
わたしも1個食べようかな♪」
オレが食べていると、
ひかりさんも1個手に取り、口に入れた。
「うん!我ながら美味しい♪」
ニコニコしながら
オレを見るひかりさんに、
オレはドキッとしてしまった。
ひかりさんから目がはなせない…。