第5章 -帰り道②-(回想)
「ね、公園行ってもいい?」
帰り道にある
大きな公園にさしかかったとき、
思い立ったようにひかりさんが言う。
「オレはいいですけど…
ひかりさん、時間大丈夫ですか?」
もう21時をまわっていた。
人通りが少ないこの辺りは、
たまにサラリーマンが通るくらいだ。
「あ…。21時過ぎてたんだ…」
ひかりさんは時間を忘れていたようで、
携帯を見てびっくりしている。
「ごめんね。虹村くんこそ時間大丈夫?
やっぱり公園いいや。帰ろっ!」
ひかりさんは慌てていたけど、
でも、話も気になったし、
何より少しでも一緒に
ひかりさんといたいと
いつのまにかオレ自身が思っていた。
「大丈夫ですよ?
話、長くなりそうだし、
公園で聞いてあげます。」
あー、可愛げねぇな、オレ。
こんな言い方しかできねぇなんて…。
でも、一緒にいたいと思った感情を
悟られたくなかったし、
何よりこれくらいのほうが、
ひかりさんも遠慮しないだろう。
「えーなにそれー?
上から目線だなぁ…」
スネるが、どことなく
嬉しそうなひかりさんを
オレはやっぱり可愛いと思ってしまう。
でも…
「あーもうっ‼︎
オレが先に帰ったとしても、
どうせ公園で黄昏てるんでしょ?」
やべっ…
俺はつい敬語を忘れて、素で言ってしまう。
「…⁇ なんでわかるの…?」
ひかりさんは、
オレの敬語が抜けたことなど、
気にもせず、誰でも予想できそうな
当たり前のことを、
不思議そうに聞いてきた。
「いや…。だいたい、
そんな昔の話したら、
1人になりたくなるというか…
つか、こんな時間に女が公園に1人とか、
襲われたらどうすんだよ?」
また敬語が抜けた。
だんだんイライラしてきたというか、
ひかりさん、変なとこアホすぎる。
「うーん…
そしたら、虹村くん呼ぶ…」
「はぁ…⁈」
オレはひかりさんの
わけのわからない返事に、
呆れて何も言えなくなった。
が、尚更1人でなんて置いていけなくなった。
「はぁ…。わかりましたって。
オレがちゃんと一緒にいますから。
公園行きますよー。」
結局、オレが先導きって公園へ行き、
オレとひかりさんはベンチに並んで座った。