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〜虹村 修造のお話〜

第36章 -ケーキ屋さん-


その日の夜、
ひかりから電話がきた。


オレは電話に出るのを
思わずためらってしまった。

自分の中に渦巻いていた気持ちが
なんだか後ろめたかったから…。



電話に出なかったら、
しばらくしてメールがきた。


『寝ちゃったかな?
今日は来てくれてありがとう!
2週間、修造に会えないと思ってたから、
ほんとにほんとに嬉しかったよ。
ちょっと疲れてたけど、元気出た!
バイトは来週の金曜日までで、
それからは元のシフトに戻るから、
あとちょっとで
またいつもみたいに会えるね。
修造にギューってしてほしいな♡』


電話に出れなかった自分の弱さに、
心底嫌気がさした。

ひかりのメールを見て、
今すぐひかりの声が聞きたかったが、
それもできず、
オレはただただ
スマホの画面を眺めていた。



次の土曜日には
ひかりに会える嬉しさと、
相変わらず消えない
オレの中に渦巻くイヤな気持ちが
混同したままだった。




最近のひかりのこと、
オレは何も知らなかった。


ひかりはいつも
オレを優先してくれていたのに…。


でも…この先親父に何かあったら…
オレは親父を優先する。
ひかりと一緒にいても、
携帯に連絡が入れば、
ひかりをおいて親父の元へ行く。



そうしたら、ひかりはどう思う?
今はまだ我慢してくれていても、
いつかは…。


それにあいつみたいなヤツのほうが、
ひかりはオレといるよりも…



そんなことを思っているのに、
早くひかりに会いたい。
キスしたい。抱きしめたい。
ひかりを誰にも渡したくない。


そう強く思うオレもいて、
自分の身勝手さにヘドが出る…。



ひかりと付き合いだして、
オレの心の中はいつのまにか
ひかりで埋め尽くされていた。
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