第5章 -帰り道②-(回想)
結局そのまま他愛ない話が続き、
何事もなかったように一緒に帰ることになった。
その他愛ない話も途切れ、
暫く沈黙してしまう。
「虹村くん…」
「なんですか?」
その沈黙を破るように
ひかりさんがオレに話しかけた。
「ごめんね。さっき…虹村くん、
何も悪くないのに怒鳴ったりして…」
「いや、気にしてないです。」
ひかりさんの発言を
気にしてないのは本当だ。
ある意味。
でも、なんか、胸につかえがあるのは、
なんだろう…。
「”ただの打撲”…」
「え…?」
ひかりさんはまるで
独り言のように呟いた。
「わたしも、最初は、
”ただの打撲”って言われたの。」
「ひかりさん?」
なんのことだ?
「わたしもそれを信じてた。
でも、”ただの打撲”じゃなかった。」
ひかりさん…?
なに言ってるんだ?
「わたしね、元々は男子バスケ部の
マネージャーじゃなくて、
女子バスケ部のプレイヤーだったの。」