第31章 -病室-
「あら♪
ひかりちゃんが来てくれるなら、
お弁当半分お願いしちゃおうかしら♪」
お袋…それは頼りすぎだろ…。
「あ、もちろんです♪
張り切って作りすぎちゃうかも。
2人とも何食べたい⁇」
ひかりはしゃがんで、
光平と笑未をジッと見る。
「ウサギさんのサンドイッチがいい!
あ、でも、
お母さんのおにぎりも食べたい!」
「じゃ、わたしはサンドイッチ担当で、
おにぎりはお母さんかな?」
弁当の話に一瞬光平は反応していた。
その反応を見逃さず、
すかさずお袋が追い打ちをかける。
「そうね。
ひかりちゃん、ありがとうね。
じゃあ、笑未の分はこれでいいわね。
光平は…いらないのかしら?」
お袋がチラリと光平を見る。
「わたし、最近クマさんとか
車に乗せたサンドイッチ
作れるようになったんだ♪
笑未ちゃんのサンドイッチ、
今度はそれ作ろうかな〜♪」
「ほんと⁈」
「……‼︎」
「じゃ、お母さんも
クマさんのおにぎりにしようかな。」
「ほんと⁈やったー‼︎」
「……‼︎」
光平がかなり焦っている。
本当は自分も…って言いたいんだよな。
ひっこみつかなくなっちまってるしな。
「こ〜へいっ。」
オレはしゃがんで光平の肩に腕を回す。
「父親参加のリレーはさ、
絶対オレが1位取ってやっから。
光平だって、
母さんとひかりの弁当食わなきゃ、
1等賞取れなくなるぞ?
だから…弁当いるよな?」
「……………うん。」
よかった…。
光平がやっと頷いた。
お袋も親父もひかりも
安心したように顔を見合わせていた。
「じゃあ、
光平と笑未が1等賞取れるように
お母さんも頑張って作らなきゃね!」
「光平くんのも車にする?
わたし、たくさん作るね!」
「うんっ!」
光平の気持ちが痛いほどわかった。
だけど、それと同時に
親父の気持ちも痛いほどわかった。
親父は笑っていたが、
とても悔しそうだった。