第40章 *白……*
「寒ぃ」と吐き出せば、白い息となってどこかへ消えていった
左をチラリと見れば、白い息を何度も吐き出してはまんざら嬉しそうに、楽しそうにしている彼女の葵
視線に気づいたのか、こちらを向いて「なに?」と尋ねてきた
「お前は子供か(笑)」
と返せば彼女は「まだ成人式してないから子供だし」と言ってきた
「お前に成人式はあるのかよ」とクツクツ笑えば、葵は「ありますぅー 私も大人の階段登りますぅ」と寒さで少し赤らめている頬を膨らませた
ああ、もう
こういうところが可愛いんだよ
そして、ふと考えた
俺達は後2年したら、20歳になって大人の仲間入りになっちまうのか
早ぇのな、20年って。
ガキの頃なんか、20歳になれば何でもできちまうとか思ってた
今18歳の俺に、あと2年でなんでもできる大人になんかなってるわけねぇな
キュッ――
左手にぬくもりを感じた
見ると葵が手を握ってきていて、心配そうに俺の顔を見上げている
「どうしたの?
何か、考え事??」
「俺達、あと2年で20歳なんだなぁって思ってよ」
「そうだね」
「早ぇよな、あと2年しかねぇの」
「うん
20年って、長いようで短いよね」
クスリと笑う彼女の顔は、聖夜祭のために飾られたこの街によく似合っていた
「でも――」
「?」
「でも、成人式を迎えて大人の仲間入りにはなっても、この世の中には沢山『大人じゃない大人』が居ると思うんだ」
寒空を仰ぎ見る彼女の瞳はどこか虚ろげで、それがなんとも形容しがたいものだった
「子供を虐待したり、人を殺めたり、脅したり――
みんな、くだらない理由で言い訳して、自分勝手だなって私は時々思うんだ――」
「確かにな
大人って、何なんだろうな」
俺も同じように空を見上げた
街にはクリスマスソングが軽快に流れている
それとは裏腹に、俺達は2年後の自分を空に見据えていた