第8章 悔しい涙
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試合は2対1で負けてしまった。
(あ、やばい....涙出る....)
吉村は試合が終わってすぐ、体育館を出た。
階段を降り、廊下を少し進んだ先で止まった。
暫くすると烏野たちが出てきた。
みんな、悔しい顔をしている。
最初に田中が出てきて、吉村に気づき、立ち止まった。
「ごめん、美颯。今はだめだ」
そう言い、吉村の横を通り過ぎようとしたとき、吉村は田中の腕を掴んで、無理やりこっちを向かせた。
と、同時に吉村は背伸びをし、田中を抱き寄せた。
肩に顎を載せ、手を後頭部に添えた。
「田中」
その一言で、田中は塞き止めていた涙を流し、吉村の背中に腕を回し、きつく抱いた。
その様子を見ていた烏野たちも、次々に涙を流していく。
体育館から次の試合開始のホイッスルが鳴った。
歓声も大きくなる。
負けたんだと、思い知らされる音が次々と耳を刺激する。
みんなが泣き止んだのは、しばらく後のことだった。
悔し涙fin.