第1章 雨降る季節【黒バス:黄瀬涼太】
兄と同じ海常高校に入学した私は、兄と同じく、男子バスケ部に入った。マネージャーの仕事はドリンクを人数分作ったりしなきゃいけなくて大変だけど、あまり辛いと感じることはなかった。それはきっとあの人のおかげだと思う。
「お兄ちゃん、お疲れ様。今日は練習してかないの?」
「あぁ。今日は帰りに黄瀬がマジバ寄りたいって言うからついてく。架那もいくか?」
「うーん、黄瀬くんと少し話してみたいし行こうかな。」
「じゃ、着替え終わるまで待ってろ。」
「うん。」
言われた通り部室の前で待ってると黄瀬くんがやって来た。もちろん部活の時に、マネージャーとして、選手として話したりはするけど、黄瀬くんとはプライベートで話したことがない。同じクラスであるにも関わらず、挨拶と部活に出るか出ないかの事くらいしか話したことがなかった。
「お疲れッス、架那っち。」
「お疲れ様、黄瀬くん。」
「笠松センパイから一緒にマジバ寄るって聞いたッスよ。部活以外で話すの初めてッスよね?」
「うん。確か。」
曖昧な返事をしてしまった。私は案外、男の子に免疫がないのかもしれない。お兄ちゃんと一緒で。
「お、黄瀬も架那も準備できたか。いくぞ。」
「うん/はいッス!」
マジバに着くまで、黄瀬くんとお兄ちゃんはまたバスケの話をしていた。私はそんなに熱く話せないからお兄ちゃんは嬉しかったと思う。家でもバスケの話をできずにいたから。いつもより笑顔だ。なんだか私まで嬉しくなった。