第46章 幸せ者
「・・・あなたたちのそばにいることができなくて、 ごめんなさいね。でも、私たちの子どもは強いってわかってたからあまり心配はしてなかったけど・・・ごめんね、ハル。まだ小さかったのに・・・あなたが一番心配だった」
「・・・お前はすぐどこかに行くからな。イタチに任せたとはいえ、不安だった」
母に続き、父の声が耳に届く。
低いその声は懐かしくて泣けるほど優しいものに思えた。
「だ・・・じょ、ぶだから・・・私、そこまで弱くないの・・・」
「そうか。強くなったんだな」
「褒めてくれてるの・・・?」
「ああ。さすがオレの娘だ」
フフ、と小さく笑みがこぼれる。
(初めて褒められた)
「・・・私・・・幸せ者だよ」
「・・・そうか」
「嬉しい。ありがとう、みんな・・・」
そこで、今まで黙っていた六道仙人が口を開いた。
「どうやら成功したようだ。・・・帰ってくるぞ」
六道仙人が私をチラリと見て、黄泉から歴代の五影を呼び戻す。
そして彼らが印を結ぶと、ナルト、サクラ、サスケ、カカシが姿を現したと同時にみんなが消えた。
「あ・・・」
彼らがフッと何の前触れもなく消えてしまったことで、私は自分が死ぬのだと急に自覚した。
「ハル!」
サスケの声が聞こえる。
私に気がついたらしい。
彼はすぐに私のそばに駆け寄り、眉を下げた。
「・・・サスケ兄さん、お疲れさま・・・」
「お前、大丈夫なのか・・・?」
「ううん、大丈夫じゃないの・・・ごめんね、もう私、無理みたい」
「そんな・・・何か手は、」
「ないよ。今はスイレンからもらった時間で命を繋いでるの・・・だから、手短に話すね」
手を握ってほしいと言うとサスケはすぐに握ってくれた。
ありがとうと笑えば、泣きそうな顔をした。
「まずは・・・今までずっと騙してたこと、謝らせてください・・・でも、後悔はしてない。サスケ兄さんの友達になれてよかった」
「・・・別に怒ってない」
「次に・・・ハルのこと、ずっと愛してくれてありがとう。ハルもずっと同じ気持ちだよ、大好きだよ、愛してるよ・・・」
意識が霞んでいく。
最後に絞り出した言葉が届いたのかはわからない。
けれども私は、もう満足だった。
『幸せ者』
“最愛のあなた”