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むりやり1,000字以内に詰めた小話(景光視点)

部屋で仕事をしていると、香ばしい様な、甘い様な香りに気付いた。小さく電子音も聞こえ、今何かが焼き上がったのだとわかる。クッキーだろうか…と想像をすれば腹は正直に反応をした。部屋から出れば、テーブルの上には色取り取りのフルーツがカットされて載った皿と、その隣には違和感しか生み出されないどら焼きの存在があった。

「クッキーでも焼いたと思ったんだが、コレは…?」

部屋をキレイにしたり、買い物に出かけたりと今日一日忙しく動く亜矢子に聞いた。掃除する事が珍しい訳でも、買い物に出掛けるのが可笑しい訳では無い。ただ、いつもと何かが違うと言うのは明らかであり、気になってはいた。

「もう少ししたらケーキができるの」
「ケーキ!?この家で何かやるのか?俺外に出て行けば良いか?」
「違うよー。深読みし過ぎ。大丈夫だよ」

そう言ってオーブンから取り出したのはパウンドケーキだった。

「粗熱を取ったら盛り付けて、完成」
「今日は何の日だ?何か特別な日だからこんな事してるんだろ?」
「んふふ♪」

その時は教えて貰えなかった。メシ時になれば分かると言うので、主張する腹を無視して、その時を待った。

そして夕飯時になり、俺は理解した。並べられた豪華な食事。そしていつも松田が座る席に鎮座する無機物。

「一応確認するが、今日の主役はコレか?」

1mはある大きめのぬいぐるみの頭頂部に、人差し指を埋める様に刺した。

「ちょっと!大事にしてよ!」
「そんなデカイぬいぐるみはどこに有ったんだ?」
「ナイショですー!とにかく座ってよ、景光くん」
「わかった…」

亜矢子はクラッカーを取り出して、紐を引いた。弾ける大きな音に、耳の奥でキーンと音がする。

「誕生日おめでとう!」

無機物相手に何してんだか…と呆れてしまった。

「あのね、彼が居てくれたから、景光くんも、萩原さんも、松田さんも、一緒に居れると思うの。彼の存在有ってこその、私の力で…だから、一緒にお祝いして欲しかったの…」
「はぁ…それなら祝わない訳にはいかないだろ」

シャンパングラスを手に取ると、嬉しそうに注いできた。亜矢子のグラスにも注ぎ、仕切り直しだ。

「誕生日おめでとう」

コツンと言う音で誕生会の始まり。主役は1m超えのぬいぐるみ。

「こんな誕生会は後にも先にもないだろうな…」
「へ?来年もやるよ?」
「え?」
[作成日]2019-09-03

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