「ガイ先生~まだぁ!?」
「ちょっとまってろ~」
テンテンの声に急かされながら、オレはさっき仕上がったばかりの品を袋に詰める。
「待たせたな!みんな、明けましておめでとう!今年もよろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「ねぇ先生?お年玉は?」
玄関先でそわそわしている子供達に、オレは笑みを隠せずに頬を綻ばせた。
「おいおい、もうお年玉が貰える歳でも無いだろう?」
「そんなの関係ないわよ!ネジの懐なんて、ポチ袋でパンパンなんだから!」
ビシィッ!と指されて、ネジが僅かに後ずさる。
「…日向家は親戚が多いからな…」
「ネジばかりズルいです」
「ぐ…、…後でぜんざいを奢ってやる…」
珍しく折れるネジに、リーとテンテンはご満悦の様子だ。
「で、先生は無いんですか?例のブツは」
したたかなテンテンは、到底おねだりとは言えない態度でオレに手を差し出してくる。
「まぁ正月にお前等がオレの家に来るなんぞ、たかり以外の何者でもないからなぁ!」
笑いながら、テンテンに紙袋を手渡す。
「何これ?」
「…お年玉ではないようですね」
「マフラー…か?」
早速袋をガサガサと開けて、子供達は出てきた赤いマフラーに眉をしかめる。
「クリスマスプレゼントにしようと思って編み始めたんだが、任務が立て込んで間に合わなくてな!」
「げっ!?先生の手編みぃ!?」
「しかもおそろい…」
「ガイ先生の愛が詰まってますね!ありがとうございますー!」
三者三様のリアクションだが、オレはそれぞれの首に巻いてやり想像通りの仕上がりに満足して微笑んだ。
「うむ!同じ物を身に付ける事によって、更にチームワークが深まるな!」
「ま…気持ちはありがたく受け取っておくわ」
テンテンが恥ずかしそうに礼を言う。ネジは不服そうだが、外さない限り嫌ではないのだろう。全く素直じゃない奴だ。
「そうだ、僕たちからもガイ先生に贈り物が」
「ん?お年玉か?」
「何言ってんの!今日はガイ先生の誕生日でしょう?」
子供達に言われて、そう言えばと思い出す。
どうにも、正月の準備や年越しのせわしなさで忘れがちになるのだ。元旦生まれは。
「あんたが何が欲しいかなんて分からないからな…塗り薬にした」
「日向家特性のお薬ですよ!」
「あ、材料は3人で採ってきたんだからね!」
手渡された軟膏に、オレの緩い涙腺が早速潤み始めた。
「お前ら…ありがとうなっ!」
「うわっ!?俺に抱きつくなっ!!」
「先生!熱い抱擁なら僕に!!」
「……なんか、除け者って感じ?今日は特別なんだからね!えいっ」
そう言ってテンテンもオレに抱きついてくる。可愛い部下からこんなに愛されて、オレはなんて幸せ者なんだろうか。
「お前ら愛してるぞぉおお!!」
雄叫びを上げれば、アパートの隣人が何事かと顔を出した。
「あ…っ」
見てはいけない物を見てしまった感の隣人に向けて、オレは親指を立てる。
「青春は素晴らしいぞ!キミもオレの胸に来ないかっ!?」
「恥ずかしいから止めてよ!」
「…回天っ!」
「ぐはっ!!」
羞恥に耐えきれなくなったネジの、手加減された回天によって弾き飛ばされるオレ達。
「先生…初詣に行きませんか?」
イタタタ…と頭をさすりながら、リーがオレに手を差し出す。
「そうだな、皆でお詣りに行こう」
リーの手に捕まり起き上がれば、ネジが不適な笑みを浮かべていた。
「それじゃ、正月の一番勝負といこうか。一番ビリの奴は、皆に金一封を振る舞うこと」
「乗った!」
「面白そうですね!ガイ先生、お先に!」
「おいちょっと待て!お前らぁ!」
見事に置いてけぼりにされたオレは、一度コートとマフラーを取りに部屋に戻る。
「ふはははっ!この、木の葉の気高き碧い猛獣に勝てると思うのかぁー!!」
高らかな笑いながら、オレは赤いマフラーを翻し仲間達の後を追うのであった。
──ガイ先生、お誕生日おめでとう!!──
日記へのコメント
まだコメントはありません
http://dream-novel.jp