第3章 逸脱した世界
「……え、もしかして、
死んでるとかじゃ、ない、よね……?」
覚束ない手付きで、一人の肩を揺する。
「……んっ……」
弦を震わすように細い声が耳に届き、
思わず安堵のため息が漏れた。
顔をよく見てみると、白人男性のようだ。
全体的に整った顔つきと
艶のある金髪に、一瞬目を奪われる。
横の人に目を向けると、
こちらは綺麗な黒髪をもつ男性のようで
白くきめ細やかな肌が印象的だった。
「あの、取り敢えず、病院に」
そう言いかけて、口を噤む。
この田舎で、
今の時間で開いている病院なんてない。
救急車が到着するのだって、
どのくらいかかるのか予測すらできなかった。