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SAOGs

第6章 第1層~第10層 その5 "天才"


とあるビルの屋上でエリーを見付けた時、既に光が迫っていた
夢中で駆け出し、手を伸ばす
無意識に脚力ブーストがかかり、フードが頭から外れていたが気にする余裕はなかった

駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!
こんな所で絶対に失わせない、最早意地の勝負

だから―

「届けえええぇぇぇぇぇ!!!」

全力で走って全力で手を伸ばす
そしてギリギリの所で、エリーを…捕まえた




エリーを抱え、更に速度を上げる
度重なるビルの上がり下がりによって足に乳酸が溜まっているだろうが知ったことか
そのまま塀を飛び越え、自らを空に投げ出す
でも、エリーは絶対に離さない

左腕でエリーを抱き、右手に私の武器である剣を持つ
何をするか、簡単だ
勢いのまま飛び出たから、このままだとビルの外壁に斜め上から激突する
だから、その瞬間に剣を刺して―勢いを殺して、降りる

「ぐっ…ぐうぅ…」

右手に激しく震動が伝わり、身体が揺れるがエリーも剣も離さない
そうして地上に両足を着け、急いでビルの影に隠れる

そこで漸く、漸く私は動きを止めた

「エリー…」

いつかの時よりも強く、エリーを抱き締める

「リ、リィ…」

何故私がいるのか、と疑問と衝撃に満ちた瞳は次第に、涙が満ちて溢れ出した
腕を私の背中に回し、顔を胸元に埋め、密着してエリーは静かに泣いていた
私は抱き締めたまま、それを黙って受け入れ、暫くそのままでいたのだった
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