第10章 episode 10【ルイ】〜愛情〜
雨の季節もようやく過ぎ去り、アイリスが凛と咲き誇る盛夏の午後、中庭でルリーはお茶の時間を楽しんでいた。
「今年は特に花々が綺麗に咲いておりますね。」
一人のメイドが庭を見渡しながら微笑ましく云うので、ルリーは、庭園に目を移した。
「ルリー様、今年は特にアイリスが一段と美しく咲いております。」
もう一人のメイドも続けた。
「私も城下にいた時から、アイリスって何故か好きだったんだよね。」
特に意識した訳でもなかったのだが、不意に口から城下に居た頃の思い出が付いて出た。