第9章 episode 9【ユーリ】〜信頼〜
「ルリー様…こっち向いて…」
「ユーリ……」
ユーリに頬を両手で覆われて、顔を此方に向けさせられ、ルリーは恥ずかしさだけじゃ無い、別の暖かさが心に広がるのを感じていた。
それは当然紅茶だけのせいではなかった。
ユーリは、ルリーの表情に視線を奪われたまま、顎に手を当てながら
「あっ…今の顔はここだけだよ。他の人に見せたら絶対ダメだからね?」
もう少しで鼻と鼻が触れそうな距離で、強請るように訴えてくる。
ルリーはその輝く琥珀色の瞳に、自分が溶け込んでしまいそうな感覚を憶え、震えた。
直後、惚けていたルリーの目の前に、すっ…と小指が差し出される。
「約束。指切りしようよ」
先ほどまでの男らしさは何処かへ消え、今度は少年の様な屈託の無い笑顔でユーリが囁く。
(こんなお願い……断れるわけないよ…)
ルリーは心の中で苦笑いしながら、そのまま微笑み返し、こくり、と頷いた。