第2章 桜、咲く
「“Selva opaca, deserta brughiera, qual piacer la tua vista mi dà !”」
木々がうっそうとおおい茂り、隙間から光が差し込んでいてなお暗い森に、鈴のような高く透き通った歌声が響き渡る。
獣道に近い道をゆったりとした足取りで進んでいく桜色にポケモンたちがついていく。
「“sovra i monti ove il turbine impera, alla calma, alla calma il mio cor s'aprirà.”」
ふわりと風に舞う桜色の髪を気にすることなく、少女は周りについてくるポケモンたちをみて頬をゆるめる。
ふと、肩から斜めに下がっているカバンの肩紐につけている球体―モンスターボールを見てボールをなでる。
「・・・はやく、名前つけてあげなきゃ。」
そう言うと、前方に見えてきた家へと歩みを進める。だんだん家に近付くにつれ、周りのポケモンたちが増えていく。
すると、家のほうから軽やかな羽音をたて一羽のピジョットが飛んでくる。
それに気付いた少女は立ち止まり、その直前まで肩に乗せていたピカチュウをおろすと、腕を伸ばしピジョンが止まれるようにさしだす。
「エリー、どうしたの?」
ゆっくりと少女に負担をかけないように腕に降り立ったピジョン―エリーは少しあわてた様子で一声鳴いた。
それを聞いた少女は一瞬眉をひそめると小さくうなずいた。
「わかった、タオルを用意してすぐに向かうね。円月にねんりきで池から引き上げてもらえるようにたのんでくれる?」
首をかしげ申し訳なさそうに少女が言うと、ピジョンはひと鳴きして腕から飛び立っていった。
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