第20章 【第十九話】もう譲れない
「……お前は記録なんかじゃねぇよ」
耳元で落ちる声。
熱い。
「オレの光だ」
胸の奥が、強く震えた。
「光……?」
掠れた声で聞き返す。
ラビはほんの少しだけ笑う。
けれどその笑みは、いつもの軽薄なものじゃなかった。
「……ああ」
翠の瞳が真っ直ぐ私を射抜く。
「オレが見てきたどんな歴史よりも、ずっと眩しい」
その言葉は、あまりにも真っ直ぐで。
私は呼吸の仕方を忘れそうになる。
ラビの指が、私の唇のすぐ横を掠めた。
「本気で離したくねぇって思ったの、お前が初めてだ」
その瞬間。
『ニルヴァーナ』が甘く脈打った。
それは警告ではなかった。
彼の熱へ、自分の魂が深く引き寄せられている証みたいで――私は息を呑む。
ラビの指先が、ゆっくり私の頬を撫でた。
触れ方は優しい。
なのに、その奥にある感情は恐ろしいほど重い。
もう、自分から離れるつもりはないのだと告げるみたいに。
「……顔、赤いぜ」
低く掠れた声。
私は反射的に視線を逸らそうとする。
けれど、ラビの手がそっと顎を支え、逃がしてくれない。
「貴方こそ……耳まで真っ赤よ」
精一杯の反撃だった。
だがラビは否定しなかった。
むしろ苦笑する。
「そりゃそうだろ」
翠の瞳が熱を孕んで細められる。
「好きな女がこんな近くにいて、平気でいられるワケねぇだろ」