第7章 子猫のふりして虎は笑む
上手く誘導されたと言うか、まんまと嵌められと言うか、食えない男の手にかかると、そこに至る動線まで、自分が選択したみたいにすり替えられてしまう。
こないだのカフェの一件から、記憶を探ったのはもちろん私だけど、探らせるよう仕向けたのも実は黒尾さんだったんじゃないかと疑心暗鬼にまでなる始末。
高校時代の、つかず離れな距離、隣にいると落ち着く空気感、レアキャラ並みの口角を上げた表情。そしてタクシーの車内で見たあの横顔。
そのどれもに一々反応しては胸がざわつくからたまったもんじゃなかった。
「行ってきまーす」
「はーい、気をつけてー」
「花衣花衣」
「なんですか」
「15分ぐらいで帰ってくるから、変なことしちゃダメよ?」
「………敢えて言わせてもらいますね。バカじゃないの?」
研磨くん家の玄関先、それぞれ持ち込んだアルコールの類が底をつきそうになった頃、買い出しに名乗りを上げた理子と黒尾さん。出がけの彼に手招きをされて近づけば、耳打ちで爆弾が降ってきた。不敵な笑みを残して颯爽と消えた背中へ、あの男、いつか必ず一泡吹かせてやると誓ってから居間へと戻った。
「こうやって見ると、もう置く場所ないね」
「クロたちもう出掛けた?」
「うん。戻ってくる前に使わないお皿とか下げちゃっていい?」
「一緒にやろ、その方が早いし」
寝そべってゲームをしていた研磨くんがゆっくりと起き上がって、テーブルの下、無造作に散乱していたコンビニ袋を広げながら空き缶を放り投げていく。
空いた食器とグラスは私がシンクへ。ある程度溜めてから蛇口を捻った。