第5章 微熱、微糖、微々たる鼓動
「花衣ちゃん、だっけ?あんま飲んでないけど、お酒苦手?」
「そうですね、得意じゃないです」
お酒もこの雰囲気も、ノリが良い、とただうるさい、を勘違いしてる男の人も。
「けど黒尾にこんな可愛いお友達がいるなんて知らなかったわー」
「……はぁ」
「たまたま会えたんじゃなくて、もしかして必然だったり?」
「あ、そう言うの信じてないんで大丈夫です」
「うわー、饒舌だねー」
ペラペラペラペラよく喋るなぁ。斜め前に座っている、名前すらよく覚えてない黒尾さんのご友人とやらは、ここへ来た時、すでに半分ほど出来上がっていた。
「お前あんま変な絡み方しないでね」
「してないしてない」
「いやしてるデショ。自覚してくださーい。俺の大事な友人なんだから」
どの口が!!そう言いかけて、寸でのところで黙った私は、多少お酒が入っていたとして、それでもまだちゃんと空気が読めている方だと思う。
居酒屋の前で研磨くんと黒尾さんと落ち合ったのは数時間前。おー、久しぶりだな、なんて唇の端を持ち上げた彼に、理子と繋がってるなんてびっくりしましたよ。そんな話をしながら暖簾を潜った。
店員に案内されたテーブル席の隣には、先客で黒尾さんの大学の友人2人。なんの悪戯か、はたまた誰かが巧妙に仕組んでいたのか。
一緒に飲もうぜ!なんて言われた頃には既にテーブルごと私たちの席にくっつけられていた。
やんわり絡むなと制してくれた黒尾さんが、申し訳なさそうな表情で、この埋め合わせは絶対するからって。私ら3人に小声でそう溢してくれたからまだ耐えれるけど。
1人だけ露骨に嫌な顔してた研磨くんは、もう色んなものを諦めてスマホゲームに没頭してる。それはもう、おれに関わるな、話しかけるなオーラ全開で。