Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第3章 木漏れ日と真昼の光路図
初めて見た日はそのツンとした表情が何故か癪に障った。自分のことを棚に上げてそれでも敢えて言わせてもらう。無愛想やのう、と。
そう思う俺の顔はどんな風に歪んだかは知らないが、彼女のテーブルにグラスを置いた時、ああ、きっとこんな表情だと悟った。
僅かに寄った眉間と、ほんの一瞬だけ散らつかせた温度の低い瞳。
きっと彼女も俺と同じだったんだろう。
昼下がり、朝っぱらから降り出した雨は今も健在だ。勢いは随分と落ち着いたものの、それでも窓の外には複数の傘が往来していた。
「さすがに今日は来ねぇか、こんな雨じゃ」
「え、誰か来よん?」
「またまた〜、分かってるくせに」
「知らんわ」
折り畳み式の簡易椅子をわざわざ引っ張り出してきて、カウンター内で頬杖をつくエンジンはオープンからやる気が底辺だった。雨の日はこぞって客足も気力も遠ざかる。プラスで普段から緩さを売りにしているようなこの人の視線は、外を見ているのにどこか定まってないようにゆらゆら揺れていた。
派手髪の彼女がふらっとウチへ来て数週間、今では週に2、3日ペースで訪れる。化けもん並なエンジンのコミュ力のせいか、2人はよく談笑するようになり、カウンターの端から2番目が彼女の定位置になった。
明後日休みだからまた来ますね。確かにそう言い残した2日前の出来事なんて何の確約にもならんわ。それにその言葉、俺に向けたんちゃうが。
薄い唇を真一文字に結んで店の隅っこで隠れるようにしていた彼女の、無愛想な皮を脱がせたのも、色んな表情をつけさせたのも全部あんたじゃろ。
やから俺の、知らん、は間違っとらんはずじゃ。