第27章 彼の誕生日編
季節は夏本番を迎える。
あなたはすでに、ヴィクトルとの同居生活にも慣れてきていた。
アパートは無事に引っ越し、彼の高級マンションに一緒に住んでいる。
秋には入籍が控え、二人の気持ちも一段と一つになっていた。
「ねえヴィクトル、ほんとに掃除はヴィクトルがするの? 分けてもいいんだよ。トイレ掃除もお風呂掃除も、ゴミ捨てもって大変でしょう」
「大丈夫だよ、名無しちゃん。俺一人でもやってたことだから。それに君はほとんど毎日美味しい料理作ってくれてるし、洗濯だってしてくれてるでしょう? 俺の家事足りないぐらいだよ」
「いやいやいや、足りてるよ。休みの日だってご飯作ってくれたり、ヴィクトルのほうが仕事忙しいのに。それに私だって、自分ひとりでもやってたことだよ」
二人で謙遜しあい、気遣い合う。
そんなことをしていると、どちらからともなく、ぷっと吹き出してしまった。
「あはは。俺達似てるね。……ほんとは無理してない?」
「してないしてない。ヴィクトルは? してるんじゃないの? ほんとはこんなこと面倒くせぇよ!って思ってるんじゃないの?」
あなたが彼の胸に掴まり、上目遣いでからかうような瞳を向けると、彼の頬は赤く染まる。
「思ってないけど……そんな男言葉使う名無しちゃん、初めて見たな。なんか良いね。もう一回やって」
「もう何の話? ヴィクトルの真似なのに」
「いや俺そんな口調しないよね? 君の前で」
焦る彼にくすくすと笑う。
そんな楽しい会話をしつつ、結局家事は無理をせずに、互いに手伝いながらやろうという変わらぬ方針に落ち着く。