第2章 第一話:強化人間
「…。」
「カーター中尉。」
急かす様に名前をよばれ、眉を顰めるアレックス。正直言って研究開発に携わる奴らはいけ好かない…。
人間を道具としか思っていない、もちろんステラの事だ。
「ーーーー今回は、敵の新型の”記憶を消しといてくれ”。」
強化人間であるステラの記憶はヴェルヘルム・ハーンにとって余計な記憶、アレックスがステラにとって精神的に悪いと判断した記憶は消去される。
これも完全ではなく、印象強い記憶を消去し続けたり長い間消去しなかった記憶を消去してしまうと記憶に空白が生まれた事により情緒不安定に陥る事や、印象強い記憶は、何らかのきっかけで思い出す場合がある
「”敵の記憶”、ですか。それは消す必要が果たして本当にあるのでしょうか?」
「聞けないのか?俺は君の上司からステラについての全てを任されているだケド?」
そう言えば、研究スタッフは少し顔を強張らせ持ち場に戻って行く…。
アレックスはそっと息を吐き出し、ステラが眠るカプセルにゆっくりと背中を預けた。