第18章 会長の秘密(ホークス)
「繭莉はさ……俺の事、どうでもいいの?」
「……そ、そんな……」
「どうでもいいから、他の男に言い寄られんの?」
絞り出すようにそう言った啓悟の目から、涙でも零れるんじゃないかと思った。
「……繭莉の考えてる事が、分かんないんだ……」
……あ……
一緒だ。
私が、啓悟が何を考えてるか分からないと悩むように、啓悟も私が何を考えてるか分からないと悩んでいたんだ。
お互い、そんな風に思ってたなんて。
「……ごめん、啓悟」
私は、啓悟をぎゅっと強く抱きしめた。
「啓悟がそんな事思ってたなんて、知らなかった……けど、私だって……不安だった」
「……繭莉」
「ショートくんから啓悟がキャバクラ出入りしてるって聞いて、実際現場見ちゃって……私の事なんて、どうでもいいのかなって………」
一度、不安を口にしたらもう止まらなくなってしまった。
「……結婚してる事だって、誰にも言わないし……っ……どうして私と結婚したんだろうって……」
本音と一緒に、目から涙が零れる。
「……ごめん」
啓悟の温かい腕が、私の背中に回された。
そして、私がしたのと同じようにぎゅっと抱きしめられる。
「俺、怖かったんだ」
「……え……」
……怖い……?
なにが?
「もしかしたらいつか、繭莉に捨てられるかもって……だから、結婚してるって誰彼に言って回るのが、怖かった」
啓悟がそんな事を思っているなんて、今の今まで知らなかった。
思えば、私は啓悟の本音を初めて聞いたかもしれない。
夫婦、なのに。
「……そんな……捨てないよ……」
「……俺が結構めんどくさい男だって、バレちゃったね」
「いいよ、そんなの……ね、啓悟」
啓悟の背中に回した手は、もしかしたら震えて汗をかいているかもしれない。
だって、今から言う言葉は、今まで言った事もなかったし何より恥ずかしいから。
「めんどくさくていいから……啓悟の好きなように、抱いて?」
次の瞬間、私の両肩はベッドに押し付けられていた。
「今言った事……後悔、しないでね?」
いつものセックスの時より確実に啓悟の目がギラついていた。
ああ。
これから私、どうなるんだろう。