第57章 歪んだ愛、終わりの始まり ※※
暫くして。
死「……久しぶりだな」
低い声。
聞き慣れたはずのない、その声に。
の瞳が、わずかに揺れる。
「……ぁ……」
ぼやけた視界の中、立っている影。
死「ひどい顔だな」
静かに言う。
ベッドのそばまで歩み寄る。
見下ろすその目は、嫌悪でも、嘲笑でもなく、どこか執着に濁っている。
死「……泣いてるのか」
ぽつりと呟く。
指が、頬に触れる。
びく、との体が揺れる。
「……っ……」
逃げる力は、もうない。
それでも、かすかに震える。
死柄木は何も言わず、そのまま涙を指で拭う。
乱暴ではなく、妙に丁寧に。
死「……そういう顔、嫌いだな」
低く、吐き捨てるように。
けれど、指は離れない。
の涙を、何度も拭う。
「……っ……は……」
呼吸が乱れる。
熱が、引かない。
頭が、ぐらぐらする。
視界の中で、死柄木の顔が揺れる。
(……もう……)
限界だった。
体も、心も、全部。
壊れているのに、まだ終われない。
その事実が、何よりも苦しかった。
「……もう……」
声が、かすれる。
「……わたし……を……」
涙が、また溢れる。
「……壊して……」
懇願だった。
救いを求めるように。
終わりを望むように。
死柄木の瞳が、わずかに細まる。
そして、静かに答える。
死「あぁ…。元より、そのつもりだ」
当然のように、揺らぎなく。
一歩、距離を詰める。
死「安心しろよ」
低く、甘く、ゆっくりと囁く。
死「俺が――」
手をの頬に添える。
逃げ場を塞ぐように。
でも、壊さないように。
死「すべて壊してやる」
その言葉は、優しさみたいに響いた。
の呼吸が、揺れる。
拒む力は、もうない。
拒む理由すら、薄れていく。
ただ、終わらせてほしい。
もう、楽にしてほしい。
は、震える手をゆっくりと持ち上げ、死柄木の手に重ねた。
そしてそのまま、瞳を閉じる。
拒絶するためじゃない。
ただ――何も見たくなかった。
逃げるように。
委ねるように。
そして、唇が触れた。
逃げ場はもうない。
ただ、壊れていく感覚だけが残った。