第50章 揺らぐ静寂、寄り添う想い ※
「はぁ…っ……はぁ……」
静寂だった。
外の風の気配すら消えたような、2人しかいない夜の深さ。
相澤は、の肩に額を落としたまま、ゆっくりと息を整えていた。
触れ合っていた温度が少しずつ落ち着くと、その代わりに重たい沈黙が降りてくる。
そして相澤は、低くかすれた声でつぶやいた。
相「……悪かった。弱ってる俺に気を遣わせた。……無理をさせて、すまない」
自分を責めるみたいな声だった。
触れ合った距離よりも、心だけが遠く離れそうな声。
はゆっくりと身体を起こして、相澤の頬に触れた。
「無理なんてしてません。……“消太さんだから”、です」
言った瞬間、自分で驚くほど素直で、情の深い声だった。
まるで告白みたいに聞こえて、胸が熱くなる。
相澤の目が、ふっと揺れる。
でも胸の奥には、ひっそりと、痛みが走る。
(でも私には、消太さんだけじゃない…)
空のように自由に手を伸ばしてくれたホークス。
火のように真っ直ぐぶつかってきた爆豪。
静かで深い想いを向けてくれた轟。
彼らの気持ちも確かにあって。
ほんの一瞬、胸にちくりとした罪悪感が刺さる。
でも、は相澤から手を離さない。
指先に、その矛盾が全部出てしまっていた。
(……こんな私が、誰か一人に寄りかかっていいの?)
その迷いが、隠しようもなく表情ににじむ。
相澤はそれを見逃さなかった。
相澤は静かに、ゆっくりと身体を起こし、ためらわずにの肩を腕ごと包み込む。
強く抱き寄せるんじゃない。
逃げ道を塞ぐんじゃない。
ただ、迷っている心ごと、そっと抱きしめるように。
相「……全部、背負わなくていい。他の誰を想っててもいい。それでも……今、苦しいなら、俺に寄りかかれ」
その声は、責めるでも求めるでもない。
ただ優しくて、あたたかくて、自分の弱さすら抱いてくれようとする声だった。
胸が締め付けられる。
は目を伏せて、抱きしめ返す力をほんの少し強めた。
「……消太さんには……できるだけ、素直でいたいんです」
その言葉に、相澤の手がわずかに震えた。
そして相澤は、何も言わずに、もう一度さっきより深く、確かにを包み込んだ。