第6章 穢れた血、幽かな声
「ぷっ、ぶはっ……な、なんだあれ……!」
ロンが、口を開いた。
けれど、出てきたのは言葉ではなかった。
――ごぼっ。
突然、大きなゲップが響き、彼の口からいくつものナメクジがぼたぼたと膝に落ちた。
「……っ!」
チユは息を呑んだ。ナメクジはぬめぬめと光りながら、次々とロンの口から吐き出されていく。
「うわっははははっ! な、なんだそれっ……!」
スリザリンチームが一斉に笑い出した。
フリントは新品の箒にしがみつきながら腹をよじらせ、マルフォイは拳で芝生を叩きながら笑い転げている。
チユは眉をひそめながらロンの背をさすった。
笑い声の中で、ロンの苦しそうな息だけが耳に残る。
グリフィンドールの仲間たちも、ナメクジを見て一歩引いてしまっていた。
周りにはいるけれど、誰も彼に手を伸ばせない。
そんな中で、チユはふと視線をあげた。
ロンのすぐ後ろに、フレッドとジョージが戻ってきていた。
「くそ……マルフォイのやつ……」
フレッドが歯を食いしばる。
ジョージも、ロンの肩にそっと手を置いた。
「大丈夫だ、ロン。すぐになんとかしてやる。心配すんな」
兄として、弟を守ろうとするその姿に、チユの胸があたたかくなる。
そのとき、ハリーが声を上げた。
「ハグリッドのところに連れていこう。1番近いし、薬草もあるかもしれない」
「うん……行きましょ!」
ハーマイオニーが力強くうなずく。
2人がロンの両脇に手を回し、慎重に立たせた。
「ごめん……ちょっと気持ち悪い……」
ロンが顔をしかめるたびに、またナメクジがぼたぼたとこぼれ落ちる。
「うわあぁーっ!」
スタンドから駆け下りてきたのは、コリン・クリーヴィーだった。
目を輝かせて、まるで見世物のようにぐるぐると3人の周りを跳ね回る。
「ハリー、どうしたの?ねえ、病気?でも君なら治せるよね! わあ! ナメクジだ!」
ロンがまたひとつ、ぬるりと吐き出す。
「おわぁー!」
コリンが歓声を上げ、カメラを構えた。
「コリン、どいて!」
「ハリー、押さえててくれる?」
「もうっ、やめてよ、コリン!」
ハーマイオニーが苛立ち混じりに言い、ハリーは彼を振り払うようにして、3人で芝生を離れていく。