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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【2】

第14章 アラゴグ


そして何食わぬ顔でグリフィンドールの列に戻ると、最後尾でロンがまだ不満げに唸っている。
チユは小さく囁いた。


「わたし、マルフォイのポケットに臭い玉、入れてきたの」


ロンが一瞬固まり、次にニヤリと笑った。
「……チユ、最高だよ」


ハリーも思わず笑ってしまい、険しい空気が少し和らいだ。


薬草学の授業が始まると、スプラウト先生は生徒たちに、アビシニア無花果の大木の剪定を言いつけた。

向かいにいたアーニー・マクミランが、ふと深く息をつくと、真っ直ぐにハリーを見て言った。


「ハリー、僕は……君を疑ったことを謝りたい。君はハーマイオニーを襲ったりなんかしない。僕が言ってきたことをお詫びする。僕たちは今、みんな同じ運命を背負ってる」


その言葉に、チユの胸がじんと熱くなる。
アーニーが差し出した丸い手を、ハリーはしっかりと握った。


「……ありがとう」
その短い返事に、ハリーの素直な気持ちがこもっているのを、チユは感じ取った。


アーニーは少し照れたように笑い、隣のハンナと一緒にハリーたちの枝を刈り込み始めた。


アーニーがふと顔を上げ、枝を折りながら言った。
「あのドラコ・マルフォイは、いったいどういう感覚してるんだろうな」


チユは息を吐き、ハリーと目を合わせた。


「こんな状況を、大いに楽しんでるみたいじゃないか?……ねえ、僕、あいつがスリザリンの継承者なんじゃないかと思うんだ」
アーニーが声を潜めて言う。


「まったく、いい勘してるよ。君は」
ロンが低くつぶやいた。まだアーニーを許していない顔だ。


「ハリー、君はマルフォイだと思うかい?」
「いや」
ハリーの返事は、あまりにきっぱりしていたので、アーニーもハンナも目を見開いた。


その直後、ハリーの視線が何かを捕らえた。大きく目を見開いたハリーが、思わずロンの手を強くつかんだ。


「アイタッ!なにす――」


「見て」
ハリーが地面を指さした。


1メートル先の地面を、クモが数匹、慌ただしく列をなして動いている。


「……っ」
チユは思わず息をのんだ。背中に薄ら寒いものが走る。


ロンは顔をひきつらせながら、なんとか笑おうとした。
「あぁ……うん……」


けれど、笑みはすぐに崩れ、はさみを握る手が震えている。

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