第7章 死者たちの晩餐会
空中にぴたりと浮かんだのは、ポルターガイストのピーブズだった。
「ピーブズ……」
思わず、チユは名をつぶやいた。
ホグワーツ中で知らぬ者のいない、騒がしくて厄介な存在。
墨入りの水差しを頭から浴びた生徒もいれば、天井から突然紙吹雪を降らされた者もいる。チユもかつて、図書室で巻き起こった騒動に巻き込まれたことがあった。
そのとき、ページの間にイモリのしっぽを挟まれて泣いたのを思い出す。
空中を漂うピーブズは、鮮やかなオレンジ色のパーティ帽をかぶり、喉元で蝶ネクタイがくるくると回っていた。
顔には、何か悪さを思いついたとき特有のにやついた笑み。瞳だけが鋭く、何かを試すようにこちらを見ている。
「やあやあ、こんな陰気な地下で、何してるのかな〜?」
ピーブズは宙返りをくるんと決めながら、どこか金属質な声で問いかけた。
「やあ、ピーブズ……」
ハリーが慎重な声で挨拶する。その声色には明らかな警戒が滲んでいた。
「ニックのお祝いだよ、邪魔しないで」
ロンがぼそりとつけ加える。
だが、ピーブズは聞いているのかいないのか、大げさに鼻の穴をふくらませて、テーブルのにおいを嗅ぐふりをした。
「このハギス、最高にクサいな!腐り方が……芸術的!」
くすくすと笑いながら、手にしていたスプーンを空中に投げる。
次の瞬間、どこからともなく現れたタライに金属音を立てて命中させた。耳にじんと響く、甲高い音が地下牢に広がる。
「おつまみはどう?」
猫なで声で言いながら、ピーブズはかびだらけのピーナッツが入った深皿を差し出してきた。
「いらないわ」
ハーマイオニーが、ぴしゃりと言い放つ。
その瞬間、ピーブズの顔がぴくりと動いた。目がぎらりと輝き、不気味に笑ったかと思うと、ささやくように言った。
「さっき、おまえが“かわいそうなマートル”にひどいことを言ったの、聞いたぞぉ」
ハーマイオニーの肩がぴくりと揺れる。
ピーブズはわざとらしく大きく息を吸い込むと、声を張り上げた。
「おーい!マートルーーー!!」
「あっ……! ピーブズ、だめ!」
ハーマイオニーが慌てて手を伸ばした。
「お願い、今のこと、あの子に言わないで。じゃないと、本当に気を悪くするわ……」
チユも顔をこわばらせてピーブズを見上げた。