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ツンデレ王子と腹黒王子

第4章 初めて


目をぎゅっと瞑った瞬間、アナウンスとドアの開く音が聞こえた。

看板を見る。

篠山駅だ!

俺は力を振り絞り、人を掻き分け電車から抜け出した。

ドアが閉まり、電車が発車する。

目の前から電車が消えると、足の力が抜けその場に座り込んだ。


「三好!」


他の車両から出てきた野木が俺に駆け寄る。

その姿を見て、何故か安心して、涙が溢れ出てきた。


「お前、もしかして…」


俺の乱れた服を見てそう呟く。

困ったことに、涙が止まらない。

止めようと、何度涙を拭っても次から次へと溢れ出てくる。


「何で、何で俺何だよ。お前が連れて来なければ痴漢何てされずに済んだのに。何で…」


泣きじゃくる俺の言葉を、野木は黙って聞いていた。

そして隣に座り、優しく俺を抱きしめた。


「悪かった、俺が近くにいてやればよかったんだ、そしたらお前も傷つかなかったのに」


何で謝るんだよ。

お前悪くねぇじゃん。

野木の心臓の音が聞こえる。

凄く、鼓動が速いような気がする。

でもそれが心地好くて、俺は野木の胸に頭をすりつけた。

野木の抱きしめる力が強くなる。


「野木、苦しい、離して」


そう言うと、野木は体から俺を離し、変わりに俺の目を見つめた。


「まだ、泣き止まない?」

「なっ、見ないで……!?」


俺が手で顔を隠そうとすると、野木に腕を掴まれ動けなくなってしまった。


「の、野木…?」

「やばい、その顔、すっげーそそる」

「え、何言って……ん!?」


野木は突然、俺の唇に、自身のそれを重ねた。
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