第14章 *Happy Birthday 7/29*〜笠松幸男〜
香奈side
「あ、先輩、おはようございます」
「っ…お、おはようっ」
テンパりすぎて、うが裏返る笠松先輩。
やはり女子は苦手らしい彼は、一応私の彼氏だ。
今でも緊張しすぎてるから、付き合う前とあまり変わってはいないんだけど。
まぁ、しょうがないと思う。
付き合い始めてから一ヶ月も経ってないのに、慣れろって方が無理だ。
「今日も部活ですか?」
「お、おう。お前は…あ、無いのか。」
「何言ってるんですか。毎日ありますよ、帰宅部。」
…つまり部活に入ってない私は、先輩の部活の大変さ…しかも、部長の大変さなんて知るわけない。
いや、むしろ知りたくない程だ。
それを引き受け、一生懸命皆をまとめる先輩は、部活なんて、って思ってた私にとって、輝いて見えた。
今だってそうだ。
時々、この差に不安になる事もある。
私には夢なんてものも、好きな事だってない。
ただ、先生の言う通り動いて、勉強して、運動して…それだけの毎日だった。
そんな私にとって雲の上の存在だった笠松先輩には、ちょっと前まで程遠かった。