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攫ってほしいと頼んでも ♔setters♔ ‐HQ‐

第3章 ウソと人魚の心を手放した代償



八つ当たりでつい荒げた声をぶつけてしまう
でも国見は大して気にした様子ではなくただただ疑問を持っているようだった


「…影山って付き合っても怒鳴ったりするんだ」 

『…え?』

「いやちょっと意外っていうか」

付き合っても?
頭の悪い私でも国見が何かを勘違いしてるのはよく分かった
必死で弁解すると国見は更に驚いたように口を開く


「…あれで付き合ってないの?
あんな公開処刑みたいな告白で?」


私がコクリコクリと頷くと「まじか」と国見は抑えた口元から声を漏らす
ただでさえ思い出したくないのに…!


「てっきりあのあと付き合ったのかと思ってた
ていうかみんなそう思ってるんじゃない」

え、あのあと喧嘩したのに??
皆そう思ってるって___


『そ、それじゃ…おい』

「おー国見ー体育館入らねぇのか、って…」

この聞き馴染みのある声…
恐る恐る顔を向けるとそこには本日二回目の金田一が呆気にとられて立っていた


「…お、お前は…!!」

『わ、私は 有栖川 じゃありません!!』


その場から立ち去ろうと足が前に出るが、逃げ道は後ろの体育館しかない
体育館への道は一方通行だから体育館を避ければ金田一に捕まる


は!体育館の中に外と繋がる出口があるよね
中に入って急いでいけばなんとなるのでは!

思いついたら体は動いていて素早く金田一とは反対方向の体育館へ駆け込む

中は既にバレーコートが設置されている状態になっていて、一番近くの扉の位置を確認する

全速力で走ってドアノブを回して力一杯押す
あれ…開かない!!
あ、そうだ押すんじゃなくて引くのか!
引いてみるけど扉はうんともすんともいわない

えぇなんで!!握っているドアノブに目を落とすと鍵のいらないロックがかかってることに気付く

こ、これ!!
横になっているそれを縦に捻りドアノブに力を込める





扉の隙間から溢れた光が体育館の床を差したとき





「あれさっきの国見ちゃんのカノジョちゃんじゃん」


「何して…」






背けたり誤魔化そうなんてもう微塵も頭になかった。ただ無性に声に引っ張られその顔が見たくなってしまったから


及川先輩に付き合おうって言われたあの日

桜が私達を祝福し
先輩と私二人だけしかいない空間
一番求めていた言葉
すごく幸せだったはずなのに


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