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つよがり いいわけ かわいい子【HQ】

第4章 つよがり いいわけ あやうい子



「本日はこちら側の急なお願いに時間を割いていただきありがとうございます。日本バレーボール協会の黒尾と申します。」

灼熱だった夏に比べたら涼しくなって来たが秋はまだ遠い。だからか流石にジャケットは着ていないが、スラックスと共布のベストを着こなしている黒尾は、やはり仕事ができる雰囲気を醸し出している。上司と私に名刺を渡す姿は流石社会人。私も受け取ると上司と共に黒尾に視線を前に戻した。

「本日確認していただきたいのはこちらなのですが…」

鞄から出てきた印刷された用紙。タイトルは「日本代表リベロ熱愛、お相手は一般人!!!」
やられた…
文章の中の写真を確認すれば、先日の五輪の会見の日の朝エントランスで撮られたようだ。

「夜久選手ですが、現在日本で言うVリーグが現地で開催されているため、会見を開くまで日数がほしいとあちらのチーム代表から連絡がありまして…」

協会側も早めに会見をしたいが、それが難しいため私に打診が来たわけか。上司もそれに気づいたらしく私より先に口を開く。

「記事が出て会見が開かれるまでどのくらいですか。」
「記事が出るのは明日、夜久選手が会見ができるのは早くて1週間、遅くても…2週間以内ですね。先日の五輪で活躍した分注目度は高いので、椎名さんの自宅やここにマスコミが集まるのは確実かと。」

そりゃあ黒尾達が早めに会見をやりたがるわけだ。一般人である私を危険に晒すわけにはいかないから。
そのまま上司に向き合うと2週間のリモートワークを提案、許可をもらう。有給消化をしたかったが流石に2週間は厳しいとのことだった。これで仕事は大丈夫。そのまま黒尾に向き直すと再び口を開く。

「…できればでいいんだけど、必要な買い出しとかあるんだけど…仕事終わった後でいいから買い出し付き合ってほしい。」

そう伝えれば黒尾は苦笑い。

「椎名サン、俺…バレーボール協会に記事が来たってことはたぶんマスコミにもこの情報は知れ渡ってる。俺ができんのは数日籠城できる分の食料を今すぐ買ってお前を協会があてがうホテル……どうしてもってんなら自宅に送り届けること。どっちがいい。」

正直籠城するなら安全なのはホテルだろう。でもこの状態じゃあ安心できる場所の方がいい。

「自宅で、お願いします。」

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