第3章 つよがり いいわけ かよわい子
今どこ
夜久からきたメッセージに涙が浮かぶ。
聞いてくれる優しさに流れる涙が止まらない。
職場 会議室
どの会議室
…どの?不思議に思い顔を上げれば、遠くから聞こえるどよめき。
3、と簡潔に番号を送れば、数秒ののち開く入り口の扉。
チノパンにTシャツ、半袖の開襟シャツというラフな格好の夜久が目の前にいた。
…夢?
「夢じゃねえよ。夏乃ニュース見てねえだろ。」
床にへたり込む私の体を軽々抱き上げ肩に担ぐ姿に抵抗もできずされるがままになりながら連れて行かれる。抵抗する力さえも残っていない、が正しい。
「今日来日、明日記者会見。言ってたろ、日本代表だから日本で会見があるって。」
忙しすぎるのと、テレビに映る姿を見たら寂しくなるからとニュースは録画だけして繁盛期が終わった後に見ようと思っていたし、前日入りするから飯一緒に食おうぜ、なんて約束してたことすっかり忘れてた。
「夏乃、席は。」
担がれ連れてこられたオフィスにはまだ残業をしている後輩や別チームの人がいる。その人たちが夜久の顔を見て歓喜するのが背後から聞こえた。私が答える間もなく、後輩が私の席を教えたためそこにある私の鞄を夜久が肩に担いだ。
「悪い、こいつ借りてく。明日はちゃんと出社させるから。あと、俺来たのは秘密で。」
そうオフィスに言い残した夜久は入り口に向かって歩いていく。そして待たせていたらしいタクシーに私ごと乗ると私の自宅に向かった。