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【HQ】ミリしらの未来【R18】

第1章 思いがけぬ日常





「好きだ」


そうクロに言われてから数日。
好きだ、とただ言われただけで、付き合ってほしいとは、言われてない。


あの日からふと、クロのことを考えることが多くなった。
好きだけど、付き合う程じゃないってこと?
そもそも好きってそういう意味じゃない?

もしかすると、こんなことを考えさせて自分に気を向かせようっていう計画的犯行??

…クロなら、やりかねない。


けど、そんなことを考えていても意味がない。
なぜなら自分は今、クロを恋愛的に好きではない以上、何もすることができないからだ。


いつものように学校に行き、廊下の窓から外の景色を眺めていた時、あいつの声がした。


「おはよーさん」

「…クロ」

「どした?なんか元気がないような?」

「なんでもない」

「あそうー」


外から吹く柔らかな風になびいて、クロからふわっと香るせっけんの匂い。制汗剤の匂い。


「朝練お疲れ様」

「さんきゅー。そういや来週、うちで合宿なんだよね」

「あぁ、そうだね」

「? 知ってんの?夜久から?」


クロがきょとんとした顔でこちらを見る。


「あ、いや、間違えた」

「?? なにが?」

「適当に返事しちゃった」


そんな私にバカかよって軽くデコピンしたクロは、にやりと笑って「俺のこと考えすぎ?」と茶化した。


「そっちのがバカじゃん…」


クロはいつも、だいたい私の考えてることが分かる。だから私がクロのことを好きじゃないことも、多分分かってる。


「…あ、そっか!」

「んー?」


だからクロは、好きだと言って、付き合ってとは言わなかったんだ。私に付き合う気がないことを、分かっていたから。


「クロってさあ、バレーでその観察力身に付いたの?」

「人間観察は、趣味ですよ?」

「へ、へえ〜」


嘘なのか本当なのか分からない回答に、やはりこいつは“見えない”なと再確認した。


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