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依々恋々 -Another story-

第10章 Shutter



お風呂のセットをしてリビングに戻ると、ソファに腰掛けて、眼鏡越しに手元のバインダーファイルを見ているブルー・グレイの瞳。
少し長めの前髪がはらりと落ちて、額から頭骨を包むように指を差し込んで掻き上げている。

キッチンカウンターに置いたままのスマホを手に取ると、カメラを起動する。

(様になるなぁ)

そっとベランダの方に移動して、いい感じに収まる角度でタップする。

カシャ、と鳴ったシャッター音に向けられる目線。
画面の中で目が合うと、少し屈めていた背中を伸ばし、なんだよ、と笑うシャンクス。
「かっこいいな、と思って」
「ジウだけずるいだろ」
ローテーブルに眼鏡とバインダーを置くと、隣りにあったスマホを手にして向けてくる。

「やーよ」
背を向けてキッチンの方へ逃げると、こら、とソファから立ち上がる。
「やだよ、恥ずかしい」
「ジウは俺のこと撮ったじゃねぇか」
ずるい、と追いかけられ、キッチンカウンターを一周する。
「嫌よ。写真、苦手なの」
ダイニングの方に逃げようとした腕を取られる。
腕の中に抱き竦められると、向けられた画面に二人が収まる。
「前向けって」
「嫌ったら」
顔を背けると、ちゅ、と頬にキス。

「ちゅーしてる写真にしてやろうか?」
頬に唇を当てたままシャッターを切ろうとする手を掴む。

「一枚だけね?」
おずおず目を向けた画面の自分と目が合う。
カメラを向いたシャンクスと二人、パチ、と切り取られる。
「壁紙にしよう」
「やめてよ」
恥ずかし、と後ろから抱き込む腕に埋まる。
再び、パチ、となったシャッター音に見上げる。

「お、すげぇいい角度」
見せて、と手を伸ばすが、届かない位置に取り上げて操作する。

ピコン、と手元の携帯が彼とのやり取りが増えたことを示す。開くと、二人の画像が送られてきている。

「さっき撮ったの、見せて」
「いいぞ?」
送られていない写真を確認する。
「消すからね」
止める様子はなく、抱きつく笑顔。
「もうパソコンとタブレットのクラウドに保存した」
いつでも復元できる、と言う笑顔に、いつの間に、と驚く。
一枚くらいならいいか、とゴミ箱のマークに向かっていた指先を止めて携帯を返す。

「お風呂、入ろ」
「ん、そうするか」
リビングでバインダーと眼鏡を持ち上げる様子にシャッターを切った。


 END
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