第1章 優しい人
「さっきは、嫌な言い方をした」
「あぁ…」
もう過ぎた事なのに。
気にしてくれたのかと、この人に対して緊張していたものが少し和らいだ気がした。
「一人でよく頑張った」
「え…」
「俺も手伝う。だから、あと少しがんばれ」
そんなこと言われたら…
ここまで頑張ったことが認めてもらえたような気がして
張り詰めていた糸が
ぷつんと切れた
「…っ、…うぅっ……ひっく……」
「っ⁈おい…」
きっとギョッとしたに違いない。
だって声が焦ってる。
でも今の私には何も見えないから分からない。
だってもう止まらないのだ。
ずっと我慢してた涙が溢れてもう止められない。
さっきまで怖かったのに、急に優しいとか…ずるいよ…
「泣くな…」
そんな事言われても、涙は急には止められません。
そもそも、こんな泣く羽目になったのは誰のせいなのか。
「あなたが泣かせたんでしょう!」
本当は違うんだけど。
さっきキツイことを言われたお返しのつもりで、ちょっと八つ当たり気味に言ってやった。
「……悪かった」
そう言うと、持っていた手拭いで涙を拭いてくれた。
ゴシゴシとちょっと強引で痛かったけど。
素直に謝る所と言い、本当はこの人は優しい人なのだと思った。
それから2人で小豆を拾いまくり、粗方綺麗になった所で良しとした。
「草履を脱げ」
「え?」
「直してやる」
さっき切れてしまった草履の鼻緒。
気付いてくれていたんだ…
手拭いの端をビッと割くと、穴に通して鼻緒を直して、また草履を履かせてくれた。
「応急処置だが、どうだ?」
「歩けます。ありがとうございます」
直してもらった草履を見て、なんだか嬉しいような擽ったいような気持ちになった。
「では行くぞ」
「行く?」
「これを運ぶ途中だったのだろう?」
見るとその人はもう既に一輪車を持って待っている状態だった。
感傷に浸る暇もない…
「俺が押していく。お前は道案内だ」
「あ、ありがとうございます!こっちです」
私がこっちと指差した方へ、その人は軽々と一輪車を押していく。
やっぱり男の人は力持ちだ。