第103章 彼と私の8月26日
『巴ねぇね、お花どーじょ』
丁度…私が今締めて貰った
サッシュベルトの色合いに合った
可愛いサイズのブーケを
どーじょしてくれている
大和の手から受け取って。
何の打ち合わせもないのに
さながら本番と…思っていると。
チャペルへと続くドアを
スタッフの人が開いてくれて。
チャペルのドアの前に
もう1人…見知った人の顔があった。
『ごめんねぇ、巴。
お父さんもどうしても来たいって』
もしかして…呼ばれたのは
妹だけだったのかも知れないが。
それについて来た母と大和と父に
私がエステをして貰ってる間に
港斗君とホテルの人と相談して
こんな感じにしたのかもって
彼も想像してなかった展開なのかも?と
思いながら…チャペルのドアを
スタッフの人が開いてくれて。
チャペルの奥には彼が立っていて
その奥の一面がロビーと一緒で
一面のガラス張りになっていて
明石海峡大橋が横切っている。
丁度…時間はマジックアワーで
真っ白なチャペルの中は…
言葉では言い表せないぐらいの
幻想的な…色合いに染め上げられている。
彼はこっちに背中を向けているが
彼もタキシードに身を包んでいて。
チャペルにある座席には
誰一人ゲストは座っていないけど。
チャペルの椅子もクリアな
素材で出来ていて、
床の部分のバージンロードも
鏡面加工がされた素材になってるから。
この今だけの色に染まっている。
お父さんにエスコートして貰って
彼の所までたどり着くと
チャペルの中は私と彼だけになって。
「ねぇ、港斗君…これって…」
『いえ…あの…、それは…
色々と…僕にも…考えが
あったと言うか…その…、
単に指輪を…はいって渡すだけじゃ
なんだかなぁって思ったんで…』
結婚指輪は…、入籍したら
はめようねって話をしていたのに
彼がずっと持ってたままだったから。
夜にディナーの時でも
渡してくれるのかな?って
私も…そんな風に思ってたんだけど。
『どうせだったら、指輪渡すのに
…チャペル借りれませんか?って
ホテルに問い合わせしてみたんですよ。
そうしたらホテルの人が…
宿泊プランの変更をどうですかって
提案と言うか、オススメしてくれたんです』