第6章 フランケンシュタインおんりー目線
ハナという人間に飼われて数日経った。
見るからにMOBとのスキンシップは慣れているという感じで、最初はずっと説明書を片手にウロウロしていたのに、今では俺たちを食卓の上で食事をさせるくらい上手く動けるようになっていた。
俺は出された雷玉(手乗りフランケンシュタイン用の餌)を食べるだけでいいんだけど、ハナは俺たちにパンとシチューをよく用意してくれていたから、どこからそんな財産があるんだろうかと思った。
ある日、ハナが俺を風呂に連れて行った時に、なぜかソワソワしている様子だった。俺は桶の中のお湯に浸かっていたのだが、その内にハナが何かを持って来てこう言った。
「ポピーの花なの。どうかな?」
どうって言われても……。
こちらの言葉を伝える方法も、ジェスチャーをする意図も分からずにただハナを見つめていると、これをよしと見たのか、持っていた赤い花を湯桶に浮かべた。
俺の体より少し大きい赤い花びらがゆらりと水面を浮いてなんだか儚いなと思った。
するとふわりと香りが漂ってきて俺はハナへ目を向けた。ハナはさらに言葉を続けた。
「香りの強いポピーの花なの。品種改良かな」とハナは話す。「なんとなくだけど、貴方にはポピーの花が似合っていると思ったから」
「ふぅん……」
俺が返事をしても、人間たちからしたら呻き声のように聞こえるらしい。これを人間たちは恐怖だとか言ったけれど、どうもハナは違うらしい。
「ふふ、ありがとね」
それから俺の頭を撫でるから、この飼い主には微妙に意思が通じそうで通じない。けれどもポピーの花が浮かぶお風呂も悪くないと思った。
そんなある日、いつものように食卓で食事をしていた時に、ハナから何か聞いたのか、ぼんミイラ男が意味深そうに近付いてきて全員に話し掛けてきた。
「ねぇみんな、知ってた?」
ぼんさんの話口調はいつもこんな感じで穏やかなのによく通るから、俺たち四人の気を引くには充分な声の大きさだった。