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一宵の舞

第7章 夢


 俺は周りの弟子たちと比べたら出来が悪かった。なんなら後から来た弟子の方が俺より早く芸を習得し、どんどんと上に行っては様々な理由で役者になるのを辞めて行った。
 正直、雅楽舞踏役者の練習はキツかったのだ。
 それは芸を習得すればする程難易度が増していき、今まで気にしていなかった部分が筋肉痛になることもあった。けど俺は、健康だけが取り柄だったから、特別な用事がない限り毎日毎日教室に通った。
 だから前に、親戚の集まりがあった時に思わず雅楽舞踏の動きをしちゃった時は、上品な息子さんですねって褒められたこともあったっけ。
 褒められるならまだいい方なんだけど、親戚のよく知らない子どもが俺の動きを見て変な踊りと言われた時には追いかけ回したこともあった。結局俺が歳上なんだからと怒られたけど、雅楽舞踏は変な踊りなんかじゃない。あれは大昔から受け継がれてきた由緒ある伝統舞踊なんだ。変じゃないんだ、変な訳じゃ……。
「最近、一生懸命だね」
「えっ」
 馬鹿にされたことを悶々と考えながら必死に芸の練習をしていた時、ヤマトさんが唐突に声を掛けてくれたのだ。
 見ると他の弟子たちは休憩時間に入っていて、いつまでも芸の練習をしている俺が気になったらしい。
「だって、腹立つんですよ。変な踊りだって」
 すると、ヤマトさんははははって笑って。
「君のやる気は怒りから来ているんだね、羨ましいよ」
 何が羨ましいのか俺には分からなかった。だって腹立つから練習してるやつなんて、きっと俺くらいだ。
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